IT Postが2026年8月23日に取り上げた、正体不明のまま無料公開されていたAIモデル「Ox Alpha」について、開発元の中国AI企業Z.ai(旧Zhipu AI)が2026年8月26日、自社のGLMシリーズの新モデルであることを認めました。正式名称は「GLM-5.3-Flash」で、同日中に、価格設定の発表・OpenRouterでの正式提供・Hugging Faceでの学習済みモデル(ウェイト)公開が行われました。モデルの重みデータは、商用利用を含めて改変・再配布が自由な「MITライセンス」で公開されています。GLM-5.3-Flashは、合計3200億パラメータのうち1トークンあたり180億パラメータのみを使う混合エキスパート型(MoE)のモデルで、テキストに加えて画像・動画も扱えるマルチモーダル対応、最大104万8576トークンのコンテキストウィンドウを持ちます。料金は入力100万トークンあたり0.15ドル、出力100万トークンあたり0.5ドルで、2026年9月9日までは通常料金の半額になるキャンペーンが実施されています。
IT Postが8月23日に「正体不明」と書いた覆面モデル、まさか1週間もたたずに答え合わせが完了するとは思わなかった。しかも中身は、当時コミュニティが囁いていた通り、中国発のGLMシリーズだったというのだから、業界の目利きたちには拍手を送りたい。無料お試し期間でたっぷり味見をさせておいて、正体を明かした瞬間に堂々と値札を貼る商法は、試食コーナーで気に入った客をそのままレジへ誘導する食品売り場の手口とよく似ている。※個人の感想です
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
何が起きているのか
IT Postが8月23日に伝えた通り、AIモデル提供プラットフォーム「OpenRouter」と、ターミナル型のAIコーディングエージェント「OpenCode」には、2026年8月20日から21日にかけて「Ox Alpha」と呼ばれる正体不明のAIモデルが、開発元不明の「覆面(stealth)」モデルとして登場していました。当時から、トークナイザーの挙動などをもとに、中国のZ.ai(旧Zhipu AI)のGLM系モデルではないかという指摘がコミュニティから出ていましたが、公式な発表はありませんでした。
Z.aiの発表によると、GLM-5.3-Flashは合計3200億パラメータのうち、1回の処理につき180億パラメータのみを使う混合エキスパート型(MoE、Mixture of Experts)のモデルです。従来のGLMシリーズと異なり、テキストに加えて画像・動画も入力として扱えるマルチモーダル対応を、既存モデルの改良ではなく新規に学習したベースモデルの段階から組み込んでいる点が特徴とされています。最大コンテキスト長は104万8576トークンです。料金は入力100万トークンあたり0.15ドル、出力100万トークンあたり0.5ドルで、2026年9月9日24時(中国時間)までは、この半額になるキャンペーン価格が適用されています。
Z.aiが公開したベンチマーク結果では、コーディング関連の評価指標「DeepSWE v1.1」でPass@1スコア63.4を記録し、前世代モデル「GLM-5.2」の46.2を上回りました。また、AIエージェントの実行能力を測る「Terminal-Bench 2.1」では84.3を記録し、Anthropicの「Claude Opus 4.8」が記録した85.0にほぼ並ぶ水準となっています。複数の評価指標を統合した「Artificial Analysis Intelligence Index」では57というスコアが報告されています。
また、GLM-5.3-FlashがMITライセンスという、商用利用を含めて自由な改変・再配布が認められた形で公開された点も重要です。*太っ腹に見えて、実はこの太っ腹さがそのまま利用者の囲い込み戦略になっている。*高性能なAIモデルを無償で使える環境が広がることは、開発者やスタートアップにとって選択肢が増えることを意味する一方、Claude Opus 4.8のような有償の最上位モデルに迫る性能を、大幅に低いコストで提供するモデルが増えることは、AIサービス市場全体の価格競争を一段と激しくする要因にもなります。中国発の生成AIモデルの技術力の高さは、かねてから注目されてきましたが、GLM-5.3-Flashのような事例は、その勢いが依然として衰えていないことを改めて示しています。
IT Postでは、覆面でのお披露目からわずか1週間足らずで身元を明かし、MITライセンスで太っ腹に無料公開までしてみせたZ.aiの立ち回りの巧みさは、素直に評価に値すると考えます。Anthropicの最上位モデルにベンチマーク上で肩を並べる性能を、大幅に安い価格で提供してくるとなれば、他のAI開発企業にとってはたまったものではないでしょう。かつて白物家電の一大生産拠点として世界の工場を担ってきた国から、こうした本気のAI企業が次々と飛び出してくる展開は、業界の勢力図を音を立てて塗り替えつつあると、IT Postは考えます。もっとも、企業が公表するベンチマーク結果はあくまで自己申告である点には注意が必要で、実際の使用感が数字通りかどうかは、今後の第三者による検証を待ちたいところです。※個人の感想です