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AI・生成AI

「Locally」を使ってみた——iPad一枚で動くローカルAI、難しい設定はどこへ消えたのか

モデルはタップで導入、処理はApple MLX。ターミナルも量子化の呪文もいらない、iPadだけで完結するローカルLLMアプリ「Locally」をIT Post編集部が実際に試した

【関連解説・2026年9月7日追加】ローカルAIの通信範囲が気になる人向けに、PC向けLM Studioのオフライン動作・外部連携・LAN共有の解説を追加しました。この記事のLocallyとは対象アプリが異なるため、機能や設定はそれぞれの案内で確認してください。

30秒で分かる結論

「Locally(ローカリー)」は、iPhone・iPad・Macの中だけで対話型AIのモデルを動かせる無料アプリです。App Storeでの名称は「Locally AI by LM Studio」、開発元はElement Labsです。文章生成AIの本体であるモデルをアプリ内から選んでダウンロードすると、インターネットに接続していない状態でも、手元の端末だけで質問への回答や文章の作成ができます。モデルの計算処理は、Appleが開発した機械学習の仕組み「Apple MLX」で行われ、Apple Silicon搭載機に最適化されています。対応モデルは、Metaの「Llama 3.2」、Googleの「Gemma 2/3」、「Qwen 3」、「DeepSeek」などが基本で、2026年8月11日公開のバージョン1.64.0では、モバイル向けの「Gemma 4 E2B/E4B Mobile」や1ビット量子化モデル「Bonsai」などが加わりました。母艦のパソコンで動かした大きなモデルを外出先のスマートフォンから使う「LM Link」機能も用意されています(2026年6月4日提供開始、申請制のプレビュー版)。

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記事のテーマを表した生成イメージ
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

まず初めに

ローカルでLLMを動かす、と聞いて身構えた人へ。ターミナルを開いて、量子化がどうの、GGUFがどうの、依存関係がどうのと呪文を唱え、半日を溶かす——あの通過儀礼は、このアプリには無い。モデルの一覧をタップ、ダウンロードのゲージを眺める、話しかける。以上。iPadが一枚あればいい。Macも、アカウントも、電波すらいらない。「ローカルAIは詳しい人の趣味」という空気を、Locallyはわりと本気で壊しにきている。遠隔つなぎこみのLM Linkも派手だが、IT Postが感心したのはむしろ地味なほう——指に吸い付くような動作の軽さと、AIエンジンの知識がまるで無い人でも迷わない画面だ。※個人の感想です

人物とAIを描いた挿絵
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

何が起きているのか

Locallyは、もともと個人開発者のAdrien Grondin氏が公開していたローカルAIアプリでした。2026年、LLMをパソコンで動かすツール「LM Studio」を手がける企業がこのアプリを買収し、Grondin氏は同社のモバイル開発を率いる立場になったと、LM Studioの公式ブログや海外の複数の報道が伝えています。買収後の名称は「Locally AI by LM Studio」で、App Storeでの開発元表記はElement Labsです。

アプリの中心にあるのは、対話型AIのモデルを端末の中だけで動かす「オンデバイス実行」です。公式サイトは「すべての処理は端末内で行われる」「インターネット接続もログインも不要」と説明しています。モデルの推論すいろん(入力から答えを計算する処理)にはApple MLXを使い、Apple Siliconのユニファイドメモリーゆにふぁいどめもりーを前提にした設計です。*要するに、重いAIをiPadのメモリーに素直に載せている。*App Storeの説明では、Appleのオンデバイス基盤モデル(Apple Foundation Models)にも対応するとされています。

AIを描いた挿絵
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

対応モデルと、その背景

App Storeの説明によると、対応モデルはLlama 3.2、Gemma 2/3/3n、Qwen 3、DeepSeekなどが基本で、バージョン1.64.0(2026年8月11日)でGemma 4 E2B/E4B Mobile、Bonsai、LFM 2.5、Qwen 3.5、Ministral 3への対応が加わりました。

  • Gemma 4 E2B/E4B Mobile: Googleが公開した、スマートフォンやタブレットでの実行を前提とする軽量モデルです。ディスク占有量はおよそ1.3GBとされています。
  • Bonsai: モデル内部の数値を1ビット(0か1)まで切り詰める「1ビット量子化」を採用した小型モデルです。重みはApache 2.0ライセンスで公開され、Apple環境ではMLXで動かせます。

各モデルの詳しい仕組みや使い分けは、IT Postで改めて取り上げます。

LM Linkとは何か

LM Linkは、母艦のパソコン(LM Studioを動かすMacやWindows機)と、手元のiPhone・iPadを安全につなぎ、パソコン側で動く大きなモデルをスマートフォンから使う機能です。2026年6月4日にLM Studio 0.4.16の一部として提供が始まりました。現在は、申請して使う「プレビュー版」という位置づけです。

つなぎ方は、両方の端末を同じLM Studioアカウントにサインインし、Locally側でLM Linkを有効にするだけです。端末どうしは自動で見つけ合います。端末間の通信はエンドツーエンドで暗号化あんごうかされ、LM Studioのサーバーに渡るのは端末を見つけるための一覧だけだと説明されています。ただし、接続の確立にはインターネットが必要で、アプリを背面に回すと接続が切れるといった制限も、現時点では残っています。便利だが、「preview」の札はまだ外れていない。

南京錠とスマートフォンとノートパソコンを描いた挿絵
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

なぜ注目なのか

ローカルでAIを動かす利点は、大きく3つあります。第一に、入力した内容が外部のサーバーへ送られないため、社外に出せない資料や個人的なメモを扱いやすいこと。第二に、利用量に応じた課金がなく、電波の届かない場所でも使えること。第三に、アカウント登録が要らないため、使い始めるまでの手間が小さいことです。

これまで、こうした環境を整えるには、パソコンでコマンドを打ち、モデルの形式や量子化の種類を選ぶといった知識が必要でした。Locallyは、その工程をアプリ内の操作だけに置き換えています。ローカルAIを試すだけ試してみたい、という多くの人にとって、入口の敷居を大きく下げる存在だといえます。

使ううえでの目安

端末の中だけでモデルを動かす以上、扱えるモデルの大きさには上限があります。技術者コミュニティの報告では、iPhoneで快適に動くのは数億パラメーター規模までで、3B(30億パラメーター)前後を4ビット量子化したあたりが実用上の目安とされています。メモリーを多く積んだiPad(M系チップ搭載機)では、より大きなモデルにも手が届きます。

小さなモデルは、要約や下書き、短い質問への回答といった用途には十分に使えますが、長い文脈の読み取りや複雑な推論では、クラウドの大規模モデルとの差が出ます。まずは軽いモデルで動作を確かめ、必要に応じてLM Linkで母艦の大きなモデルにつなぐ、という使い分けが現実的です。

初心者が知っておくべきこと

「ローカルLLM」とは、対話型AIの本体を自分の端末の中だけで動かす方式のことです。通常のチャットAIは、入力を事業者のサーバーへ送って処理しますが、ローカルLLMは端末内で完結するため、外部との通信が発生しません。

「量子化」とは、モデル内部の膨大な数値を、精度を少し落とす代わりに軽い形式へ変換し、必要な容量と計算量を減らす手法です。スマートフォンのように容量や電力に限りのある端末で大きなモデルを動かすために、広く使われています。Locallyが配布するモデルの多くも、こうして軽量化されたものです。

IT Postの見方

IT Postで実際に使ってみたところ、Locallyの価値は「何ができるか」よりも「誰に使えるか」の側にあると感じました。ローカルAIの界隈は、長らく自作パソコンや黒い画面と地続きで、詳しくない人を静かに締め出してきた分野です。Locallyは、モデル選びを買い物カゴのように、実行を「話しかける」だけに落とし込むことで、その壁をあっさり越えてきます。動作も軽く、古めのiPadでも待たされる感覚が少ない——地味ですが、ここがいちばん効きます。LM Linkは強力で、外出先から自宅の大きなモデルを呼び出せる体験は新鮮です。ただ、まだプレビュー版で接続の安定性に課題が残る以上、当面の主役は端末内で完結するオンデバイス実行のほうだとIT Postは考えます。AIをまず手元で触ってみるための入口として、いまもっとも人を選ばないアプリの一つだとIT Postは考えます。※個人の感想です

人物とAIを描いた挿絵
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

今後どうなりそうか

Locallyは無料で配布され、LM Linkもプレビュー期間中は無料とされていますが、正式版の料金体系はまだ公表されていません。オープンソースではない点にも留意が必要です。今後は、対応モデルの追加ペースと、LM Linkの安定性がどこまで上がるかが注目点になります。IT Postでは、BonsaiやGemma 4 Mobileなど個々のモデルの解説と合わせて、ローカルAIアプリの動向を続けて取り上げます。

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