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中国当局がDeepSeekとMoonshotを正式調査、Anthropicの「蒸留」告発はどうなったか。その後の展開を確かめる

Anthropicが指摘した中国系AI企業による「蒸留」疑惑を受け、中国のサイバースペース管理当局がDeepSeekとMoonshot AIの調査に乗り出した経緯を確認した

30秒で分かる結論

  • 中国の国家インターネット情報弁公室(网信办、通称CAC)が、DeepSeekとMoonshot AIの2社を対象に、正式な調査を開始したと2026年9月23日前後に複数の海外メディアが報じました。
  • きっかけは、Anthropicが2026年9月10日に公表した154ページの脅威インテリジェンス報告書です。同社は、Alibaba・Moonshot AI・DeepSeek・Zhipu・MiniMax・Xiaomi・SenseTimeの中国系7社が、Claudeへのリクエストを不正に迂回させて出力を収集する「蒸留」を行っていたと指摘していました。
  • CACは当初、名指しされた7社すべての担当者を呼び出して聴取した後、対象をDeepSeekとMoonshotの2社に絞って調査を進めているとされています。処分の有無は、今回確認した出典の範囲では明らかになっていません。
この記事の目次 7項目
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まず初めに

他社のAIの答えをこっそり借りて自分の実力にすり替える「蒸留」疑惑で名指しされた側が、今度は自国の当局から「その答え、どこから持ってきたんだ」と呼び出しを食らう。人のふんどしで相撲を取った疑いをかけられた挙句、ふんどしの出どころ(データの行き先)を身内から詰められる格好で、傍から見ればなかなか気まずい展開だ。しかも呼び出された7社のうち、最終的に本格的な調査の対象として残ったのはたった2社。残り5社にしてみれば、うちは呼ばれただけで済んだと、ひとまず胸をなで下ろしているところだろう。※個人の感想です

何が起きているのか

IT Postは既に、Anthropicが2026年9月10日に公表した脅威インテリジェンス報告書について、Alibaba・Moonshot AI・DeepSeekの3社の疑惑を中心に取り上げています。この報告書でAnthropicは、Alibaba・Moonshot AI・DeepSeek・Zhipu・MiniMax・Xiaomi・SenseTimeの中国系7社が、2025年12月から2026年8月にかけて、自社のチャットボットなどへのリクエストをClaudeへ迂回させ、その出力を収集して自社モデルの学習に利用する「不正な蒸留じょうりゅう」を行っていた疑いがあると指摘していました。Anthropicの報告によれば、Moonshotは2026年5月から7月にかけて2,300万件超のやり取りを、DeepSeekは7月の14日間で1,200万件超のやり取りをそれぞれClaudeへ送っていたとされています。

複数の海外メディアの報道によると、この報告書の公表を受け、中国の国家インターネット情報弁公室(国家互联网信息办公室、通称「网信办」、英語名Cyberspace Administration of China=CAC)が、名指しされた7社すべての担当者を呼び出して事情を聴取しました。その後、調査の対象をDeepSeekとMoonshot AIの2社に絞り込み、担当者が両社を訪問して聴取を行うなど、正式な調査を進めているとされています。

報道では、CACが確認しようとしているのは、中国国内の公安・軍事・国有企業などに関連する機微な情報が、両社によるClaudeの利用を通じて米国のAI企業側に渡っていないかという点だとされています。2026年9月28日時点で、調査の結論や処分の有無については、今回確認した出典の範囲では明らかになっていません。

なお、Moonshot AIは香港での新規株式公開(IPO)を非公開で申請中とされており、一部の海外メディアは、今回の調査の存在が目論見書での開示義務を生む可能性があると報じています。

なぜ重要なのか

今回の展開が注目されるのは、一企業(Anthropic)による競合への疑惑提起が、その競合企業が拠点を置く国の規制当局による正式調査にまで発展した点です。AIモデルの学習データやその収集方法をめぐる論争は、これまでも著作権や利用規約違反の観点から議論されてきましたが、今回は「どの国のAIモデルに、どの国の情報が渡ったか」という、データの越境移転という切り口が前面に出ている点が特徴的です。

また、名指しされた7社のうち、最終的にCACが調査対象を2社に絞り込んだという事実は、Anthropicが指摘した疑惑の中でも、特にこの2社について当局が重く受け止めた可能性を示唆しています。ただし、その具体的な判断基準は、今回確認した出典の範囲では明らかになっていません。

私たちへの影響

今回の調査は、DeepSeekやMoonshot AIのサービスを日本から直接利用している個人利用者に対して、現時点で直接的な影響を及ぼす性質のものではありません。ただし、AIサービスを選ぶ際に、そのサービスがどこの国のどの企業によって運営され、入力したデータがどのように扱われているかを意識する材料の一つにはなります。

企業でAIサービスの導入を検討する際は、利用規約やプライバシーポリシーで、入力データの取り扱い・保存場所・第三者への提供の有無を確認することが引き続き重要です。特に競合他社のAIサービスへリクエストを迂回させるような設計は、意図せず機密情報を外部へ送信してしまうリスクにもつながりかねない点を、今回の事案は示しています。

初心者が知っておくべきこと

モデル蒸留(Model Distillation)とは、本来は性能の高い大規模なAIモデル(教師モデル)の出力を、より小規模なモデル(生徒モデル)に学習させることで、小規模ながら高い性能を実現するための、正当な機械学習の手法です。しかし今回Anthropicが問題視しているのは、この技術自体ではなく、利用規約で禁止されている形で、他社のAIモデルの出力を無断で収集し、自社モデルの学習に転用したとされる行為です。同じ「蒸留」という言葉でも、正規の手法として使われる場合と、規約違反・不正行為として問題視される場合があることを区別して理解する必要があります。

IT Postの見方――疑惑は「調査中」のまま長引かせない方がいい

IT Postでは、Anthropicが自ら被害を主張する報告書を公表し、それを受けて相手国の規制当局が実際に調査へ動いたという展開そのものは、業界の自浄作用として一定の意味があると考えます。一方で、名指しされた7社のうち5社が調査対象から外れた理由や、残る2社に対する調査がいつ、どのような形で決着するのかが見えないまま時間だけが過ぎていく状況は、業界全体にとって好ましくないとIT Postでは考えます。疑惑をかけられた企業にとっても、疑惑を向けた企業にとっても、白黒がはっきりしない「調査中」という状態が長引くほど、AIサービス全体への信頼が宙ぶらりんになるからです。※個人の感想です

今後どうなりそうか

CACによる調査の結論や、DeepSeek・Moonshot AI側からの正式な反論・説明が公表されるかどうかは、今回確認した出典の範囲では明らかになっていません。Moonshot AIが申請中とされる香港IPOの審査プロセスに今回の調査がどう影響するかも、今後の焦点の一つです。IT Postでは、続報があれば改めて取り上げます。

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