企業・仕事・DX ElegooのCentauri Carbonに発火寸前の報告、Mars 5の不具合、ファームウェア問題——5つの指摘を検証して確かめる ツールヘッドのケーブル発火報告、Klipper由来をめぐるライセンス論争、Mars 5のUSBと液漏れ、CANVAS後付けの不具合。Elegooへの5つの指摘について、確認できた事実とメーカー対応、所有者の対策を整理した
30秒で分かる結論
前回のメーカー評価記事の続編として、Elegoo製品への5つの指摘を検証しました。確認できた事実は次の通りです。第一に、Centauri Carbonのツールヘッドケーブルで被覆破れから火花・熱暴走ねつぼうそう に至ったとする報告があり、米消費者製品安全委員会への報告番号付きの事例も存在します。第二に、ElegooOSがオープンソースのKlipperを改変したものかという論争があり、当初の否定説明の後に同社がコードを公開、現在も十分性への疑問が残っています。第三に、Mars 5のUSBメモリー認識不具合の報告が多数あり、形式や容量の厳格な条件が文書化されています。第四に、Mars 5で液体樹脂じゅし が内部に浸入して液晶えきしょう パネルを破損させる事例が、構造上の弱点として記録されています。第五に、Centauri CarbonへのCANVAS後付け時に前面カバーの検出不具合が出る事例があります。いずれも製品全体の欠陥と断定できる段階ではなく、個別報告・コミュニティ検証の域を出ないものを含みます。断定的なリコール情報はありません。
まず初めに
前回は褒めた。賞も取っているし、安いし、速い。だが読者から、というより筆者自身の腹の虫が収まらない。発火寸前、ライセンス違反疑惑、USBが読めない、液が垂れる、後付け部品でエラー。褒めた会社の裏側に、不具合報告の山がある。ならばやることは一つだ。怒りのままに書くのではなく、一つずつ裏を取る。※個人の感想です
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
1. Centauri CarbonのType-Cケーブル発火寸前問題
最も深刻な指摘がこれです。米法律事務所の注意喚起ページがまとめているところでは、2025年10月11日付で、使用約700時間後にツールヘッドへ向かうケーブルの被覆が破れ、火花と熱暴走が起きたとする報告があります。温度は320度のはずの上限を超えて400度に達したとされ、米消費者製品安全委員会への報告番号付きの事例として紹介されています。同ページによれば、メーカーの対応は保証内でのケーブル交換だったとされています。
補強する情報もあります。修理ガイドサイトのCentauri Carbon不具合集では、エラー801や803(押出機と基板の通信異常など)とともに、ツールヘッドケーブルの発熱や煙の報告に触れています。同サイトによれば、このUSB-C端子は通常の5ボルトではなく24ボルトが流れており、通電中の抜き差しが基板を壊すとされています。利用者コミュニティの分解検証でもこの配線が確認されています。
ただし割り引いて読むべき点もあります。法律事務所のページは集客目的の注意喚起であり、中立の調査報告書ではありません。また報告は個別事例で、製品全体の設計欠陥と認定されたわけでも、リコールが出ているわけでもありません。「発火した」ではなく「発火寸前だった」という表現が正確な範囲です。所有者はケーブルの被覆破れ・焦げ臭・異常な高温がないか点検し、異常があれば電源を切って使用を中止するのが安全です。
2. ElegooOSのオープンソース問題
ファームウェア をめぐる論争です。技術系メディアのレビューでは、Elegoo側が「ElegooOSはKlipperベースではなく、Klipperは2チップ構成だが当製品は1チップ構成で、オープンソースのKlipperコマンドやプラグインにも対応していない」と説明していたことが記録されています。
その後、利用者コミュニティの解析でKlipper由来のコードが含まれているとの指摘が広がり、同社はGitHubにCentauri Carbonのリポジトリを公開しました。2025年10月の技術メディアの報道では、この公開を一歩前進としつつ、出されたコードがライセンス条件を満たす十分なものか疑問が残ると伝えています。KlipperはGPLv3という「改変したら改変後のコードも同じ条件で公開しなければならない」ライセンスで配布されており、この点が論争の核心です。
なお書き添えておくと、同種の指摘はElegooに限った話ではありません。CrealityのK2シリーズやBambu Labをめぐってもライセンス論争が報じられており、3Dプリンター 業界全体の宿題になっています。この件を「中国メーカーだから」と片付けるのは、事実関係としても筋が悪いと言えます。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
3. Mars 5のUSBメモリー問題
Mars 5では、USBメモリーを差しても認識されない、途中で切れるといった報告が多数あります。修理ガイドでは20の既知不具合の一つとして「読めないUSBドライブ」を挙げています。条件は厳格で、FAT32形式・16GB以下の容量が求められ、ファイル名の文字や拡張ケーブルの接触も原因になります。公式のサポート情報もUSB認識のFAQを項目化しているほどで、定番トラブルと言えます。
実務的な対処はシンプルです。まず別のUSBメモリーで試し、FAT32でフォーマットし直します。ファイル名は英数字のみにし、拡張ケーブルを疑う場合は基板に直結して切り分けます。それでも直らなければファームウェアの更新、それでも駄目なら基板交換の領域です。印刷データを運ぶ唯一の経路が不安定なのは、安さと引き換えの弱点と言えます。
4. Mars 5の液垂れ問題
液体樹脂を使う光造形機につきものの話ですが、Mars 5では構造上の弱点として文書化されています。修理ガイドによれば、液晶パネルはPETの保護フィルムと細い枠のパッキンで守られているだけで、こぼれた樹脂がパッキンを外して内部に入り込むとされています。症状は自己診断の異常表示、周囲の液だまり、パターンの欠け、ドット抜けなどで、「最も高額な故障」と位置づけられています。上位機のMars 5 Ultraでも、傾斜機構への樹脂浸入が記録されています。
対策は地味ですが効果的です。保護フィルムを貼って運用し、こぼしたら固まる前に拭き取ります。タンクのフィルムの張りや傷も定期点検の対象です。光造形機は「漏れるもの」と思って付き合うのが長持ちの秘訣です。
5. CANVAS後付け問題
多色刷り装置CANVASを初代Centauri Carbonに後付けした際の不具合報告です。修理ガイドによれば、古い前面カバーには磁石が付いておらず、CANVAS化後にカバー検出エラーが出るとされています。カバーを外して磁石の有無を確認し、なければ新しい版に替えるのが対処です。またCANVASなしの状態で手動の色替えをしても何も起きないという報告もあります。
後付け全般に言えることですが、本体と追加装置の組み合わせは、発売時の一体型より検証が薄くなりがちです。CANVASは初代向けの追加装置として売られている以上、こうした段差はメーカー側の案内で吸収してほしいところです。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
所有者が今できること
指摘の真偽とは別に、所有者が今日からできる点検をまとめます。第一に、Centauri Carbonのツールヘッドケーブルの被覆破れ・焦げ臭・異常な発熱の有無です。使用時間が長い個体ほど点検の価値があります。第二に、USBメモリーはFAT32・16GB以下・英数字ファイル名の三点を守ります。第三に、光造形機は保護フィルムとこぼした際の即清掃を徹底します。第四に、ファームウェアは公式手順で更新し、CANVAS後付け時はカバーの磁石を確認します。第五に、異常を感じたら電源を切って使用を中止し、サポートに連絡します。火花・煙・400度の表示は、様子見してよい症状ではありません。
IT Postの見方
IT Postでは、今回の検証を「前回記事の補完」と位置づけています。
*賞を取る速さで売る会社が、ケーブルの曲げ半径とライセンス表記でつまずく。この構図こそ、Elegooという会社の現在地だ。*公開後、所有者の報告によれば、同社は声明を出して新型ケーブルの設計変更と交換対応に動いています(詳細は続報記事で整理しました)。一方で、断定的なリコール情報はなく、報告の多くは個別事例の域です。怒りにまかせて「欠陥品」と断じる段階ではありません。OSS論争についても、中国云々ではなく業界全体の宿題として扱うのが筋です。前回「安さで殴るだけの会社ではない」と書きましたが、今回はこう付け足します。売る速さに見合うだけの、説明と検証の速さがまだ追いついていない。※個人の感想です
今後どうなりそうか
注目点は三つです。第一に、ケーブル問題へのメーカーの正式な見解や対策発表があるかです。第二に、公開されたコードへのコミュニティ検証が進み、ライセンス論争が決着するかです。第三に、ファームウェア更新での改善状況です。CPSCなど公的機関の動きや、リコール情報が出れば重大ニュースとして扱います。IT Postでは、メーカー側の正式発表や新たな検証結果が出次第、あらためて取り上げます。メーカー全体の評価は前回の記事で読めます。