AI・生成AIGoogle CloudでClaude Opus 5.5が動くようになったのは何を変えるのか。「AIにAIを採点させる」新しい開発作法を確かめる
計画・実装と検証を異なるモデル系統に分ける。Google AntigravityでClaude Opus 5.5・Sonnet 5.5が使えるようになった意味と、開発パターンを一次資料から確かめた
まず初めに
コードを書いたモデルが自分の成果をそのまま評価すると、同じ見落としが残りうる。Googleが示した例は、実装役と異なるモデル系統に検証役を任せる方法だ。LLM-as-a-Judge全般に他社モデルが必要という意味ではないが、開発の途中で視点を変える使い方は実務的だと思う。※個人の感想です
何が起きているのか
Google Cloudは2026年10月20日、公式ブログで「Claude Opus 5.5 and Claude Sonnet 5.5 are now available in Google Antigravity」と題した記事を公開しました。執筆者はGoogle CloudのプロダクトマーケティングマネージャーMarialaura Garcia氏と、Google Antigravityのデベロッパーリレーションズ担当Rich Hyndman氏です。「Google Antigravity」は、Google Cloudが提供するAI開発者向けのツールで、コードの作成やテストをAIに任せながらソフトウェアを開発するためのプラットフォームです。
今回の発表により、AnthropicのClaude Opus 5.5・Claude Sonnet 5.5が、Google Cloudの顧客向けにAntigravityで利用できるようになりました。発表では、Claude Opus 5.5を複雑な作業向けのモデル、Claude Sonnet 5.5を高速・低コストな補完用モデルと位置づけています。管理者が機能を有効にすると、開発者はモデルピッカー(使うAIモデルを選ぶ画面)からClaude Opus 5.5・Sonnet 5.5を選択できるようになります。管理者は、GoogleのGeminiモデル(Gemini 3.8 Flash、Gemini 4 Argonを含む)も同じ画面から選べます。対応範囲は、Antigravity 2.0、Antigravity CLI、そしてVS Code・JetBrains IntelliJ・Visual Studio向けに最近公開されたAntigravity IDE拡張機能です。いずれも、統一された企業向けの課金・セキュリティ境界のもとで利用できるとされています。
発表では、複数のAIモデルを組み合わせて使う2つの具体的なパターンが紹介されています。1つ目は「クロスモデル検証(LLM-as-a-Judge)」です。LLM-as-a-JudgeはAIモデルに出力を評価させる方法の総称です。Googleは今回、その一例として異なるモデル系統に検証役を任せる方法を示しています。これは、ループ型やグラフ型のエージェント(AIが自律的に作業を繰り返す仕組み)を構築する際、同じモデルに自分のコードを書かせて、そのまま自分でレビューさせると、そのモデル特有の見落とし(盲点)が残りやすいという考え方に基づくものです。そこで、あるモデル(Claude Opus 5.5やGemini 4 Argonなど)に設計・実装を任せ、別系統のモデルに、テストや要件に照らして実装を検証させる、という役割分担を提案しています。Antigravity上では、作業の途中で「/model」というコマンドを使ってモデルを切り替え、別のモデルにチェックさせることも、自動化されたサブエージェントを使うこともできるとされています。
2つ目は「推論モデルとFlashサブエージェントの組み合わせ」です。複雑な開発作業には、高度な判断が必要な場面と、ファイルの検索やログの確認、テスト失敗の分類といった、手間はかかるが機械的な作業が混在しています。こうした機械的な作業をすべて高性能(フロンティア級)のモデルにやらせると、応答時間とコストの両方が増えてしまいます。Antigravityの「サブエージェント」のカスタマイズ機能(設定ファイル.agents/agents/*.mdで定義)を使うと、サブエージェントごとに使うモデルの階層(inherit=現在のセッションのモデルを継続使用、flash=Geminiの高速版、pro=Geminiの高性能版)を指定できます。発表では、テストの実行と失敗の分類だけを担当する「test-triager」というサブエージェント(model: flashを指定)と、コードの差分を検証する「cross-model-judge」というサブエージェント(model: pro、Gemini Proを使用)の設定例が示されています。
なぜ重要なのか
この発表が重要な理由の一つは、Google Cloudの開発者向けツールが、自社のGeminiモデルだけでなく、競合にあたるAnthropicのClaudeモデルも正式に組み込み、両者を同じ課金・管理体系のもとで選べるようにした点です。AI開発の現場では、特定の1社のモデルだけに依存するのではなく、作業内容に応じて複数のAI企業のモデルを使い分ける「マルチモデル」という考え方が実践的な手法として位置づけられつつあることを示しています。
もう一つの理由は、「同じモデルに自己採点させない」という発想を、具体的な設定例つきで提示したことです。AIにコードを書かせる際、そのAI自身にレビューまでさせると、同じ思考の癖やモデル固有の見落としが見逃されやすいという課題は、AIを使った開発が広がるにつれて指摘されるようになってきた問題です。別系統のモデルに検証役を任せるという提案は、この課題への実践的な対処法の一つです。また、軽量なモデルに機械的な作業を任せる仕組みは、AI利用のコストと応答速度を管理する上での具体的な工夫として参考になります。
私たちへの影響
今回の発表が直接対象としているのは、Google Cloudの「Antigravity」を使ってソフトウェアを開発している企業・開発者です。管理者がAI開発者向けツールの設定で、Gemini Enterpriseの「設定」>「AI開発者ツール」からClaudeモデルなどの外部パートナーモデルを有効化し、Google Cloudの請求アカウントでの従量課金(オーバーエージ)を有効にする必要があるとされています。Gemini platform経由でAPIとしてAntigravityを使う場合は、Model GardenでClaudeモデルを有効にし、Anthropicの利用規約に同意する手順になります。開発者側は、Antigravity 2.0・CLI・IDE拡張機能を最新版に更新し、モデルピッカーや「/model」コマンドで使うモデルを選ぶだけで利用を始められるとされています。
一般の利用者が直接何かをする必要はありませんが、普段使っているアプリやサービスの裏側で、開発チームが複数のAI企業のモデルを使い分けてソフトウェアを作る、という開発スタイルが広がっていることを示す出来事です。日本国内でGoogle Cloudを利用してソフトウェア開発を行っている企業・エンジニアにとっては、既存のGeminiだけでなくClaudeモデルも同じ基盤で選べるようになった点が、実務上の選択肢の広がりとして直接関係してきます。
初心者が知っておくべきこと
「LLM-as-a-Judge(AIによる評価)」とは、文章やコードなどの出力をAIモデル(LLM)に評価・採点させる手法のことです。別会社のモデルは必須ではありません。人がすべてをチェックするよりも速く、大量の出力を評価できる利点がありますが、評価する側のAIにも得意・不得意があるため、評価させるAIを工夫して選ぶことが重要になります。「サブエージェント」とは、メインのAI(親エージェント)から指示を受けて、特定の作業だけを担当する、より小さな役割のAIのことです。今回の例のように、作業内容に応じて異なる性能のAIモデルをサブエージェントに割り当てることで、全体の効率を調整できます。
Q. 個人で使っているClaude.aiやChatGPTのようなチャット利用にも関係がある話ですか。
A. 今回確認した発表の対象は、Google Cloudの企業向け開発者ツール「Antigravity」であり、一般利用者向けのClaude.aiやChatGPTのようなチャットサービスについての言及は、今回の発表にはありません。主にソフトウェア開発者・企業向けの話題です。
IT Postの見方――「仲間はずれ」を増やす方向の協調は、歓迎していい
IT Postは、GoogleとAnthropicという本来は競合関係にある企業のモデルが、同じ開発ツールの中で選べるようになったこと自体を、利用者側にとって好ましい変化だと考えます。開発チームが特定の1社のAIに依存し続けると、その会社の値上げや性能の停滞に振り回されやすくなりますが、複数社のモデルを使い分けられる環境が整うことは、発注先を選べる立場を保つという意味で、開発者・中小の開発会社にとって悪い話ではありません。
一方で見ておきたいのは、こうした「マルチモデル」の運用には、企業向けの課金・管理の仕組みへの理解や、複数のサブエージェントを設定・運用する手間が新たに必要になるという点です。発表で示された設定例は、.agents/agents/*.mdというファイルにモデルの階層を細かく書き分けるもので、使いこなすにはそれなりの技術力が前提になります。大企業の開発チームには歓迎される工夫でも、専任のAI活用担当を置けない小規模な開発現場にとっては、便利な機能が増えるほど、使いこなせる側とそうでない側の差が広がっていく側面もある、とIT Postでは見ています。※個人の感想です
今後どうなりそうか
今回確認した発表の範囲では、今後のモデル追加や機能拡張についての具体的なスケジュールは示されていません。Antigravityで利用できるモデルの全リストは、Google Cloudの別のドキュメントで随時更新されるとされています。IT Postでは、他のAI企業のモデルが追加されるか、マルチモデルを前提とした開発パターンがどこまで実務で定着するか、あらためて確認していきます。