企業・仕事・DX英バークレイズ、2026年末までに開発者の50%が「Claude Code」を利用する計画。1日12万件のメール処理の中身を確かめる
英大手銀行バークレイズが2026年10月1日に発表したAnthropicとの提携拡大。開発者の50%が「Claude Code」を使う計画、1万6000人が使う行内AI、1日12万件のメール処理という具体的な数字を確かめた
まず初めに
銀行が「AIを全社展開する」と発表するたび、業界の人間は半分眉をひそめる。大抵は数字が大きいだけで実態は小さなパイロット版か、裏ではまだExcelが現役で動いているかのどちらかだからだ。しかし今回のバークレイズ、「1日12万件のメール仕分け」という、地味だが確実に人手を食っていた作業を名指しで挙げてきた時点で、看板だけの話とは一線を画す。ただし「開発者の半分がClaude Codeを使う」計画の実態が、ログインしてみただけの実績まで含むのか、本当にコードの大部分をAIが書いているのかは、この発表だけでは判別できない。大きな数字の裏の中身を見極める必要がある一本だ。※個人の感想です
何が起きているのか
英国の大手銀行バークレイズは2026年10月1日、AI企業Anthropicとの戦略的な協業を拡大し、Claudeを全社的に展開すると発表しました。目的として、ソフトウェア開発の加速、レガシーシステム(長年使われてきた基幹システム)の近代化、業務効率の向上を挙げています。
発表の中心は、開発者向けのAIコーディング支援ツール「Claude Code」の導入目標です。バークレイズは、2026年末までに開発者人員の50%がClaude Codeを利用する状態を見込んでおり、2027年にはソフトウェアエンジニアの過半数まで利用を広げる計画だとしています。
既に稼働している取り組みとしては、2025年から始まった「Colleague Knowledge Assistant」があります。これは、英国の個人向け銀行業務に携わる行員が、顧客対応の際に必要な情報を素早く探せるよう支援する仕組みで、現時点で1万6,000人以上の行員が利用し、処理した検索は100万件を超えているとしています。
行員の「困ったときはAIに聞く」が、業務の一部として普通に定着しつつあるようだ。
また、Global Markets(市場部門)では、Claudeモデルを使って顧客からの問い合わせメールを分類・補足し、適切な対応ルートへ振り分ける仕組みを運用しています。発表によると、この仕組みが処理する問い合わせメールは1日あたり約12万件に上るとしています。
なぜ重要なのか
今回の発表が注目されるのは、スタートアップ企業の実証実験ではなく、規制の厳しい大手銀行が、検証可能な具体的な数字(導入率の目標、処理件数、利用者数)を伴ってAI活用を公表した点です。企業のAI活用に関する発表は、しばしば「業務効率化に取り組んでいます」といった抽象的な表現で終わることが多く、今回のように数値目標まで示すケースは珍しいといえます。
ふわっとした「AI活用に取り組んでいます」だけで押し切れる時代は、そろそろ終わりが見えてきたのかもしれない。
もう一つの重要な点は、対象が「顧客対応」「市場部門のメール処理」「ソフトウェア開発」という、銀行業務の複数の領域に同時に広がっていることです。これは、AIの導入が特定の部署の実験的な取り組みから、組織全体を横断する基盤的な仕組みへ移行しつつあることを示す事例として注目されています。
私たちへの影響
一般の消費者が今回の取り組みを直接意識する場面は多くありません。ただし、バークレイズに問い合わせをした際、その対応の裏側でClaudeモデルがメールの振り分けを行っている可能性があることは留意しておくとよいでしょう。発表によれば、Claudeが行っているのは分類・振り分けであり、最終的な回答や判断そのものを行っているとは説明されていません。
ソフトウェア業界で働く方にとっては、大手金融機関が開発者の半数以上にAIコーディング支援ツールの利用を見込むという目標設定自体が、今後の業務の変化を考える上での一つの参考材料になります。発表では人員削減については言及されておらず、生産性向上という位置づけで説明されています。
企業のIT担当者にとっては、顧客対応支援AI・業務メールの振り分けAI・コーディング支援AIという3種類の異なる用途を同時に展開する進め方が、自社でAI導入を検討する際の参考事例になり得ます。
初心者が知っておくべきこと
「生成AI」とは、文章・画像・音声などのコンテンツを新たに作り出すことができる人工知能のことです。Claudeのような対話型AIも生成AIの一種で、質問に対する回答文を生成したり、メールの内容を読んで分類したりすることができます。
「大規模言語モデル(LLM)」とは、膨大な文章データを学習し、人間の言葉を理解・生成できるようにした人工知能の仕組みです。Claudeをはじめ、ChatGPTやGeminiなど現在の主要な対話型AIは、いずれもこの大規模言語モデルを基盤としています。
Q. バークレイズの顧客は、今回の取り組みによって何か変わりますか?
A. 出典で確認できた範囲では、顧客からの問い合わせメールの振り分けにClaudeが使われているとされていますが、顧客が直接操作したり、対応方法が変わったりするといった説明は、今回の発表には含まれていません。
IT Postの見方――数字は立派、中身は宿題
IT Postは、バークレイズが「効率化」「生産性向上」という言葉だけで済ませず、1日12万件のメール処理や100万件超の検索実績という、検証可能な数字を公開した点自体は評価したい。多くの企業がふわっと「全社的にAIを活用します」で済ませる中、ここまで具体的な数字を出してきたのは珍しい。
ただ、「開発者の半分がClaude Codeを使う」計画の先に待っているのが、開発者の仕事がラクになる話なのか、半分の開発者がいなくなる話なのかは、今回の発表のどこにも書かれていない。IT Postは、巨大銀行がこの手の数字を「生産性向上」という無害な言葉でまとめる時、その裏で人員計画が静かに動いていないか、注視が必要だと考える。※個人の感想です
今後どうなりそうか
バークレイズは、Claude Codeの利用率について2026年末までに50%、2027年には過半数という具体的な時期を示しています。この目標が実際に達成されるのか、またその過程でソフトウェア開発者の業務内容がどう変化するのかは、発表時点では明らかにされていません。IT Postでは、目標の達成状況や、開発者の働き方への具体的な影響が明らかになれば、改めて取り上げます。