30秒で分かる結論
Appleは現地時間2026年9月9日、AirPods 5を発表しました。耳を密閉しないオープンイヤー型のまま、アクティブノイズキャンセリングを搭載し、AirPods 4と比べて最大50パーセント多くの騒音を低減するとしています。複数の開口部を持つ音響構造と適応型のイコライゼーション、パーソナライズされた空間オーディオを備えます。首を縦横に振る動作でSiriの問いかけに応答でき、対応する言語間のライブ翻訳にも対応します。防塵・耐汗耐水性能も向上しました。ワイヤレス充電ケース付きモデルはノイズキャンセリング有効時で最大5時間、ケース併用で最大22時間の再生が可能です。日本での価格は2万3800円、ワイヤレス充電ケース付きモデルが2万7800円。予約は9月9日開始、発売は9月18日です。
まず初めに
耳を塞がないイヤホンで、騒音を消す。文章にすると、雨戸を開けたまま台風をしのぐと言っているのに近い。
しかしAppleは、それを最大50パーセント多く消したと言う。物理法則を曲げたわけではなく、外から入ってくる音を打ち消す音を鳴らして相殺している。要は、うるさい部屋でもっとうるさく喋って黙らせる作戦だ。上品ではないが、効く。
そのうえ、うなずけばSiriが理解する。ついに我々は、返事をするために口を開く必要すらなくなった。人類の進歩は、いつも横着の方角へ真っ直ぐ進む。※個人の感想です
オープンイヤー型で騒音を消すという設計
イヤホンのノイズキャンセリングには、大きく二つの要素があります。ひとつは物理的に耳を塞いで音の侵入を減らす方法、もうひとつは外の音をマイクで拾い、逆位相の音を鳴らして打ち消す方法です。前者を遮音、後者をアクティブノイズキャンセリングと呼びます。
耳の穴に詰めるカナル型のイヤホンは、前者が最初から効いています。一方、耳の穴を塞がないオープンイヤー型は、装着感が軽く、周囲の音も自然に聞こえる代わりに、遮音がほとんど働きません。したがってオープンイヤー型で騒音を減らすには、後者に大きく依存することになります。
AppleはAirPods 5について、複数の開口部を持つ音響構造と適応型のイコライゼーションを組み合わせ、AirPods 4と比べて最大50パーセント多くの騒音を低減するとしています。比較の相手が前世代のAirPods 4である点は押さえておきたいところです。耳を密閉するタイプの製品と比べた値ではありません。
耳を塞がずに静けさを得る。健康診断で言えば、食べたまま痩せる話に近い。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
うなずいて答える、翻訳して聞く
AirPods 5では、首の動きでSiriの問いかけに応答できます。縦に振れば肯定、横に振れば否定です。通知の読み上げに対して「返信しますか」と尋ねられたとき、声を出さずに済みます。
もうひとつが、対応する言語間のライブ翻訳です。相手の話す言葉を翻訳して耳に届ける仕組みで、対応するiPhoneのApple Intelligenceと組み合わせて動作します。
これらの機能を使う前に、二つ確認しておくべき点があります。ひとつは対応言語で、すべての言語の組み合わせで使えるわけではありません。もうひとつは、翻訳の処理がどこで行われるかです。端末内で完結する処理と、インターネット経由で行われる処理では、通信環境や情報の扱いが変わります。仕事の会話や機微な内容を扱う場合は、あらかじめ機能の説明を確認しておくのが安全です。
バッテリーと防塵・耐水
再生時間は、ワイヤレス充電ケース付きモデルでノイズキャンセリングを有効にした状態で最大5時間、充電ケースを併用すると最大22時間です。防塵性能と、汗や水への耐性も向上しています。
耐水性能について、ひとつだけ注意があります。この種の性能は「壊れない保証」ではなく、規定された試験条件での結果です。雨天での使用や運動中の汗には対応しやすくなりますが、水没させてよいという意味ではありません。また、耐水性能は経年で低下します。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
価格と発売日
日本での価格は、標準モデルが2万3800円、ワイヤレス充電ケース付きモデルが2万7800円です。予約は9月9日に始まり、発売は9月18日です。同日にはiPhone 18 Pro/iPhone 18 Pro Maxも発売されます。
IT Postの見方――「耳を塞がない」を諦めなかったことが大きい
IT Postでは、AirPods 5の要点は「50パーセント」という数字ではなく、その数字をオープンイヤー型のまま出してきたことにあると考える。
騒音を消したいだけなら、耳の穴に詰める形にすればいい。技術的にはそのほうが素直で、静けさの深さでも勝てる。実際、静粛性で評価される製品の多くはその方向を選んでいる。だがカナル型には、はっきりした代償がある。長時間つけると耳が疲れる。自分の声がこもって聞こえる。歩いていて背後の音に気づけない。この不快さは、性能表には載らないのに、毎日つける人にはいちばん効いてくる。
Appleが選んだのは、その不快さのほうを先に潰す道だ。静けさの絶対値では譲るが、装着感と外音の自然さを手放さない。快適さは数値化しにくいから宣伝には向かないが、結局のところ「毎日つけるか、引き出しに入れるか」を決めるのはそこだ。
日本の読者にとって、何が変わるのか
判断の分かれ目は、使う場所である。
通勤電車、飛行機、工事現場の近く。低い音が持続する環境なら、耳を密閉するタイプの実力は依然として大きい。静けさを最優先するなら、そちらを検討する価値がある。
一方、自宅での作業、オフィス、散歩やランニング、家事をしながらの音楽再生。こうした場面では、周囲の音がある程度聞こえることそのものが安全と利便につながる。宅配便のインターホン、家族の呼びかけ、自転車の接近音。全部消してしまうと困る音は意外に多い。
そしてもうひとつ、うなずきでの応答は、両手がふさがっている場面や、声を出しにくい場所で効いてくる。電車の中で通知に返事をするために独り言を言う人が減るなら、それは社会全体への貢献と言っていい。
よくある疑問
Q. カナル型より静かになりますか。
そのようには示されていません。Appleが示しているのは、前世代のAirPods 4と比べて最大50パーセント多く騒音を低減するという値です。耳を密閉するタイプとの比較ではありません。
Q. 翻訳機能は、どの言語でも使えますか。
対応する言語間での機能です。使いたい言語の組み合わせが対応しているか、購入前に確認してください。また、対応するiPhoneのApple Intelligenceと組み合わせて動作します。
Q. 雨の日に使っても大丈夫ですか。
防塵性能と耐汗耐水性能は向上していますが、水没に耐える設計ではありません。この種の性能は規定された試験条件での結果であり、経年で低下することも知られています。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
雨戸を開けたまま台風をしのぐ、という無茶を毎年少しずつ実現に近づけている。オープンイヤー型で静けさを追う設計は、性能表の頂点は取れない。だが、引き出しにしまわれないイヤホンを作るという意味では、こちらのほうが正しい戦いだ。