AI・生成AIMetaも参戦、Muse Spark 1.3で「OpenAI・Anthropicに並んだ」宣言 止まらない9月のモデル攻勢
9月2日、MetaがMuse Spark 1.3を公開。独立指標ではGPT-5.6と同水準の知能を4割前後安く、との評価も。Meta AI責任者は「過去最大の性能向上」。Grok、Gemini、Claude、そしてMeta——今週これで何本目か
30秒で分かる結論
2026年9月2日、Metaが対話AI「Meta AI」の基盤となる最上位モデル「Muse Spark 1.3」を公開しました。開発元のMeta Superintelligence Labs(MSL)によると、コーディングや、複数の手順を自分で進める「エージェント」的な作業、長い会話をまたいで作業を続ける能力が強化されており、コーディングでは前バージョンの1.2と比べて「ツールの呼び出しが約20%、消費トークンが約25%少なくなった」としています。開発者はコーディング支援ツール「Muse Code」とAPI経由で当日から使え、最上位の「max」推論モードは追加の安全性テストのあとに提供されるとしています。
料金は1.2から据え置きで、Meta AI責任者のアレクサンダー・ワン氏によれば、開発者が1.2より多く払う必要はありません。具体的には100万トークンあたり入力1.25ドル・出力4.25ドル(Muse Spark 1.3の「xhigh」設定)で、「max」設定の価格はまだ公表されていません。
第三者の評価も出ています。ベンチマーク(AIモデルの性能評価)分析のArtificial Analysisは、独自の総合知能指標でMuse Spark 1.3をおよそ61〜62点とし、OpenAIのGPT-5.6 Solと同水準としました。そのうえで、同社の指標での1タスクあたりのコストはMuse Spark 1.3が0.55ドルで、GPT-5.6 Sol(max)の0.95ドル、Grok 4.6(high)の0.94ドルより4割前後安いとしています。コンテキストウィンドウ(一度に扱える文脈の長さ)は100万トークンで、テキスト・画像・動画を入力できます。ワン氏はこの更新を「Metaにとって過去最大の性能向上で、OpenAIやAnthropicの最新モデルと同じ水準に並んだ」と表現しています。
まず初めに
ヤンキー精神の国のSNS帝国が、またAIの卓に札を積んできた。Muse Spark 1.3である。
Metaといえば、看板だった「Llama」をLlama 4でベンチマークを盛ってコケ、しばらく借りてきた猫みたいに大人しくしていた会社だ。それが今年に入ってMuse Sparkに切り替え、1.1、1.2、そして1.3と、他社と同じ「毎月更新」のリズムに乗ってきた。責任者いわく「過去最大の飛躍」。まあAI業界で「過去最大」は挨拶みたいなものだが、今回は珍しく第三者の数字が「そこそこ本当」と言っている。追いついた、は少し盛りすぎにしても、差は詰めた。そこは認めていい。※個人の感想です
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
Muse Spark 1.3で何が変わったか
Metaの説明では、1.3の力点は「長時間の作業」に置かれています。ひとつの長い会話の中で複数の作業を並行して進め、情報が食い違う資料からでも自分で文脈を組み立て、計画の抜けに気づいたら自分で直しにいく、といった振る舞いが強化されたとしています。
コーディングでの効率化(ツール呼び出し約20%減、トークン約25%減)は、同じ仕事をより少ない手数で片づけられるという主張で、料金据え置きと合わせると実質的な値下げに近い意味を持ちます。派手な新機能より、燃費の改善という地味な訴求です。
Metaは公開時のベンチマーク一覧で、1.3を1.2・GPT-5.6 Sol(max)・Claude Opus 5(max)と、エージェント・コーディング・指示追従・長文脈の各分野で比較しています。ただし具体的な点数は公開資料の本文には示されていません。
「並んだ」の根拠はどこにあるか
「OpenAIやAnthropicに並んだ」はMeta側の表現ですが、今回は第三者の数字がある程度それを支えています。Artificial Analysisの総合知能指標で61〜62点はGPT-5.6 Solと同水準で、しかも1タスクあたりのコストは競合が7割以上高い、という位置づけです。同社のランキングでは636モデル中6位としています。
一方で、この指標は9種類の評価を独自に束ねたもので、内訳のデータの一部は「非公開」とされています。*外から検証しきれる数字ではない、という但し書きは付きます。*Meta自身の主張と、独立指標の評価が、今回は同じ方向を向いている——現時点で言えるのはそこまでです。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
価格は「据え置き」
Muse Spark 1.3のxhigh設定は、1.2と同じ100万トークンあたり入力1.25ドル・出力4.25ドルです。ワン氏は「1.2より高くは取らない」と明言しています。
9月に公開された他社モデルも、AnthropicのFable 5.1がキャッシュ料金を75%引き下げ、GoogleのGemini 3.8 Flashが年内限定の割安な導入価格を付けるなど、性能だけでなく価格でも競い合う展開になっています。Metaの「同じ性能をより安く」は、その流れの中では分かりやすい立ち位置です。
日本から安く試すには
Muse Spark 1.3の標準料金は上記のとおりですが、より安く使う道もあります。ひとつが「Contributor(コントリビューター)」版で、料金は100万トークンあたり入力0.10ドル・出力0.20ドルと、標準の10分の1以下です。代わりに「入力した内容とAIの出力が、Metaの製品改善に使われることがある」という条件を受け入れる必要があります。安さと引き換えに、自分のやりとりを差し出す形です。
日本の一般の開発者・利用者がMuse Spark 1.3を安く試す場合、現状の主な入り口は次のようなサービスです。
- OpenRouter:多数のAIモデルをまとめて呼び出せる中継サービス。標準版とContributor版の両方を扱う
- OpenCode Zen:コーディング向けに検証済みのモデルを集めた従量課金のゲートウェイ。Contributor版は無料で使える枠もある
- OpenCode Go:月額10ドルのサブスクリプション。約29モデルが対象で、Muse Spark 1.3のContributor版を含む。5時間・週・月ごとに利用量の上限がある
- Muse Code:Meta自身が提供するコーディング支援ツール
いずれも従量課金かサブスクで、Metaの公式アプリ「Meta AI」とは別の経路です。無料・格安の枠を選ぶときは、入力内容が学習側に回る可能性がある点をふまえて、機密情報は入れないといった使い分けが要ります。
Museファミリーの現在地
MetaのMuseシリーズは、2026年4月に構想が示され、7月9日にMuse Spark 1.1、8月5日に1.2が公開されました。8月10日には、1.2をもとに規模を縮小し重みを無償公開した「Muse Glimmer」(約300億パラメータ、Apache 2.0)も登場しています。Muse GlimmerについてはMetaが約1年ぶりにオープンウェイトモデルを公開で解説しています。
Metaは最上位のMuse Spark自体についてもオープンウェイト版を公開する計画を示していますが、時期は未定です。フロンティアの性能で並びにいくことと、オープンウェイトで開発者を囲い込むことの両方を、同時に狙っている構図です。
IT Postの見方
Metaのやり方は、遅れてきた者として理にかなっている。「いちばん賢い」で勝つのは難しいので、「同じくらい賢いのを、はっきり安く」で殴りにいく。第三者の数字がそれを裏づけているのも大きい。Llama 4でベンチマークを盛って信頼を失った会社が、今回は外の指標に検証させる形で発表したのは、学習の跡と見ていい。
ただし、これも9月に入ってから止まらないモデル攻勢の1本にすぎない。Grok、Gemini、Claude、gpt-6-astraの影、欧州勢、そしてMeta。ひと月ぶんの新製品が、1週間で出そろっている。IT Postでは、Metaの「並んだ」が本物かどうかは、maxティアの価格公開と、他社が次の一手を打ったあとにこの差が保てるかで決まると考えています。この数日の全体像は9月アタマのAIモデル乱発はどう見てもおかしいにまとめています。
今後どうなりそうか
当面の焦点は、「max」設定の価格がいくらになるか、Muse Sparkのオープンウェイト版がいつ出るか、そしてInstagram・Facebook・Meta AIアプリ・Ray-Ban型AIグラスへの展開がどこまで進むかです。Artificial Analysisが示した「同水準・低価格」という評価も、GPT-6系やGrok 4.7など予告されているモデルが実際に出れば、また塗り替わる可能性があります。