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中国CXMTが「EUV無し」でDRAM量産に踏み切ったのはなぜか。新規格「G5」の狙いを詳しく探る

中国CXMTがEUV無しで実現した第5世代DRAM「G5」の量産を発表。50%という数字の中身と、生産体制の実態を確かめた

30秒で分かる結論

  • 中国のメモリー半導体メーカーCXMT(長鑫存儲技術)は2026年9月20日、合肥で開かれた「世界製造業大会」で、第5世代DRAM(記憶素子)プラットフォーム「G5」の量産開始を発表しました。最先端の露光装置(EUV)を使わず、既存装置による多重露光技術で前世代比50%多い有効ダイ数(1枚のウエハーから取れる良品チップ数)を実現したとしています。
  • G5プラットフォームでは、24Gb(ギガビット)のLPDDR5X(スマートフォン向け高速メモリー)製品2種類を発表し、前世代の同等品に比べてデータ容量が50%増えたとしています。これらはすでに中国製フラッグシップスマートフォンの主流機種に搭載されているとしています。
  • CXMTは合肥2拠点・北京1拠点の12インチDRAM工場を稼働させており、2026年9月時点で月産30万枚、年末までに月産37万5000枚を目標としているとしています。
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生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

まず初めに

*最新鋭の露光装置を使わせてもらえないなら、力業で数を追えばいい――なんとも力技な発想だが、これはこれで一つの答えではある。*かつては炊飯器や洗濯機で世界を席巻した"元・白物家電の王国"が、今度はメモリー半導体の主役に躍り出ようとしているのだから、産業の変わり身の早さには恐れ入る。もっとも、発表されている数字はすべて発表元の自己申告であり、実際の歩留まりや品質を独立した第三者が確かめたわけではない。※個人の感想です

チップを描いた挿絵
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。

何が起きているのか

中国のDRAM(記憶素子)メーカーであるCXMT(長鑫存儲技術)は2026年9月20日、安徽省合肥で開催された「世界製造業大会」の場で、第5世代となるDRAMプラットフォーム「G5」の量産開始を発表しました。

今回の発表で注目されているのが、製造に使う露光装置です。最先端の半導体製造で主流となっているEUV(極端紫外線)露光装置はオランダASML社が製造していますが、CXMTは対中輸出規制の影響でこの装置を入手できていません。そのためCXMTは、従来型のDUV(深紫外線)露光装置を複数回重ねて使う「多重パターニング」という技術を用いており、今回のG5では4回重ねる方式(四重露光技術)によって、メモリーアレイの主要な構造の間隔(ハーフピッチ)を約11.95ナノメートルまで縮小したとしています。あわせて、DRAM向けに適応させた高誘電率メタルゲート(HKMG)工程を新たに開発し、G5プラットフォームの核となる機能領域の高さを6,762ナノメートルまで縮小したとも説明しています。中国のメディア報道によれば、こうした技術水準は世界最高水準の量産プロセスに匹敵するとされています。

CXMTによると、こうした微細化の結果、1枚のウエハーから取れるダイ(チップ)の理論上の個数は、前世代に比べて少なくとも50%増えたとしています。ただし、この数値は不良品を除く前の理論上の個数(dies per wafer)であり、実際に良品として出荷できる割合(歩留まり)を示す数値とは異なる点には注意が必要です。

具体的な製品としては、G5プラットフォームを使った24Gb(ギガビット)のLPDDR5X(スマートフォンなどに使われる高速・省電力メモリー規格)製品を2種類発表しました。それぞれ端子数(ボール数)が496と245の異なるパッケージ形状で提供され、前世代の同等品と比べてデータ容量が50%増えたとしています。CXMTによると、これらの製品はすでに中国製フラッグシップスマートフォンの主流機種に搭載されているとしています。

生産体制については、CXMTは合肥に2拠点、北京に1拠点の合計3カ所で12インチDRAM工場を稼働させており、2026年9月時点で月産30万枚のウエハーを処理し、年末までに月産37万5000枚まで引き上げる目標を掲げているとしています。

なぜ重要なのか

DRAM(記憶素子)市場は、これまで韓国のサムスン電子やSKハイニックスといった企業が世界シェアの大半を占めてきた分野です。中国のCXMTが、最先端の製造装置を使えない制約の中でも技術的な工夫によって世代を進め、生産能力を拡大させている点は、世界のメモリー半導体供給の構図に影響を与えうる動きとして注目されています。

DRAMは、パソコンやスマートフォンをはじめとするほぼすべてのデジタル機器に搭載される基幹部品であり、その供給量や価格は、機器の製造コストに直結します。CXMTのような新たな供給元が生産能力を拡大させることは、長期的には世界全体のメモリー価格の動向にも影響しうる要素の一つです。

私たちへの影響

今回の発表内容は中国国内向けの製品供給が中心であり、今回参照した情報源の範囲では、CXMT製メモリーが日本国内で販売される製品に直接使われているという情報はありません。ただし、DRAMは世界的に取引される部品であるため、供給量が増えることが中長期的に世界的なメモリー価格の動向に影響を与える可能性はあります。パソコンやスマートフォンの価格・スペックに関心がある読者にとっては、メモリー半導体の供給地図が変化しつつあるという動きの一つとして押さえておく価値があります。

初心者が知っておくべきこと

「DRAM」とは、パソコンやスマートフォンなどのメイン記憶装置(メモリー)に使われる半導体の一種で、処理中のデータを一時的に記憶しておく役割を担います。電源を切るとデータが消える性質を持ち、ストレージ(SSDなど)とは役割が異なります。

半導体の製造では、回路パターンを基板に転写するために光を使う「露光」という工程があります。「EUV(極端紫外線)」は波長が非常に短く、細かい回路パターンを1回の露光で描ける最先端技術ですが、装置が高価かつ入手が難しい国・企業もあります。今回CXMTが使った「多重パターニング」は、より波長の長い従来型の光(DUV)を使いながら、同じ場所に複数回露光を重ねることで、EUVに近い細かさのパターンを実現しようとする代替手法です。

「LPDDR5X」とは、主にスマートフォンやタブレットなど、消費電力を抑えたい機器向けに使われる高速メモリー規格の一つです。数字が大きいほど新しい世代を表し、一般的に高速化・省電力化が進みます。

IT Postの見方――力業で数を稼ぐ戦略、実力が伴っているかは第三者の検証待ち

IT Postでは、最先端の製造装置という選択肢を封じられた中で、既存の装置を工夫して使い倒し、世代を前に進めてきたCXMTの取り組みは、技術的な工夫としては素直に評価してよいと考えます。

とはいえ、「50%多い」「50%増えた」という数字は、あくまでCXMT自身の発表であり、独立した第三者機関による歩留まりや品質の検証結果が示されたわけではない。かつて白物家電で世界を席巻した国が、今度はメモリー半導体の総本山(韓国勢)の牙城にどこまで食い込めるかは、発表された数字がどこまで実態を伴っているか次第だろう。IT Postでは、CXMT製メモリーの実際の品質や、それが世界的なメモリー価格に与える影響について、第三者による検証や市場データが出そろうのを待って評価したいと考えます。※個人の感想です

今後どうなりそうか

CXMTが掲げる年末までの月産37万5000枚という目標が実際に達成されるかどうか、また今回のG5世代の製品が中国国外にも供給されるようになるかどうかについては、今回参照した情報源の範囲では明らかになっていません。IT Postでは、CXMTの生産動向や、世界的なメモリー価格への影響について、新しい情報が確認され次第あらためて取り上げます。

情報源

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