訴状は、この合意を「当然違法(per se違法)」、またはその代替として「クイックルック」や「合理の原則」に基づく分析としても主張しており、「競合企業同士が製品の品質や改善速度を意図的に落とすことに合意するのは、生産量を制限する合意にあたる」という考え方を核にしています。原告側は、クレイトン法に基づく3倍損害賠償と、AI開発ペースに関する企業間の合意の差し止めを求めており、陪審裁判も要求しています。原告側の代理人は、Trial Lawyers for JusticeのNicholas C. Rowley氏らが務めています。
訴訟の背景にあるのは、AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏が2026年9月12日に公表したエッセイ「We Must Pace the Frontier(私たちはフロンティアのペースを落とさなければならない)」です。アモデイ氏はこの中で、AI開発企業各社が足並みを揃えて意図的に開発速度を落とすべきだと提言しました。これに対し、OpenAIのサム・アルトマン氏、Google DeepMindの共同創業者デミス・ハサビス氏、そしてイーロン・マスク氏がそれぞれ賛同する姿勢を示していたことが、複数の報道で伝えられています。
IT Postでは、今回の訴訟が単なる目立ちたがりの訴えにとどまらず、AI業界にとって本質的な問いを突きつけていると考えます。「みんなで速度を落とそう」という呼びかけが、消費者のためを思った安全策なのか、それとも競争を弱める口実なのかは、掲げる理由が立派であればあるほど見分けがつきにくくなります。NVIDIAのフアン氏が「終末論はやめろ、我々は全力で進む」と言い切る姿勢も、安全重視派からすれば物足りなく映るかもしれませんが、少なくとも「みんなで足並みを揃えよう」という発想そのものが独禁法のセンサーに引っかかるリスクを、身をもって示した格好です。AI企業各社が今後、安全性を理由にした業界内の協調を語るときは、その一言一言が独占禁止法の文脈でどう読まれるかを、これまで以上に意識せざるを得なくなるはずだと、IT Postでは考えます。※個人の感想です