30秒で分かる結論

中部電力株式会社は2026年8月4日、同社が利用する一部システムへの不正アクセスにより、役職員の電子メールの一部と、同社グループの連絡先情報が外部に漏えいした可能性があると発表しました。対象になった可能性があるのは、関係機関・自治体・取引先など約2,400人分と、同社グループの役職員・委託先社員など約71,700人分をあわせた、最大約74,100人分の連絡先情報です。電力供給に関わるシステムや、電気・ガスの契約者情報を扱うシステムへの不正アクセスの痕跡は確認されていないとしています。

まず初めに

電気を止めない仕事をしている会社が、自社の連絡先情報を7万人分以上、外部に漏らしかけた。電力の安定供給という一番大事な仕事はきちんと守られていたようだが、社内の連絡先の管理はそこまで盤石ではなかったらしい。停電は困るが、知らない相手から突然メールが届くのも、それはそれで十分に困る。※個人の感想です

何が起きているのか

中部電力の発表によると、きっかけは2026年7月29日、第三者機関からの情報提供でした。これを受けて調査した結果、同社が利用する一部システムの資格情報(ログインに使うID・パスワードなどの情報)が不正に利用され、社内システムの一部が外部から閲覧された可能性があることが判明しました。

漏えいした可能性がある情報の内訳は、関係機関・自治体・取引先など約2,400人分(会社・団体名、役職、氏名、メールアドレス、電話番号)と、中部電力グループの役職員・委託先社員など約71,700人分(会社名、所属、役職、氏名、メールアドレス、電話番号)です。あわせると最大約74,100人分にのぼります。中部電力は、発表の時点で電力供給に関わるシステムや、電気・ガスの契約者(顧客)情報を扱うシステムへの不正アクセスの痕跡は確認されていないとしており、電力供給そのものへの影響は生じていないとしています。

同社は、不正アクセスの経路となった資格情報の無効化と、不正アクセス元の遮断という対応を実施しています。

なぜ重要なのか

電力会社は、家庭や企業への電力供給という社会インフラを担う一方で、取引先の自治体・関係機関を含む幅広い連絡先情報を業務上保有しています。今回のように、電力供給システムそのものではなく、社内システムの資格情報を経由して外部に情報が渡ってしまうと、直接的な停電などの被害はなくても、関係する自治体・取引先を巻き込んだ広範囲の情報漏えいにつながることが今回の事案で示されました。

社内システムの資格情報が不正利用されるという手口自体は、企業の規模や業種を問わず起こり得るものです。重要インフラを担う企業であっても、社内の連絡先管理や認証まわりの対策が別途必要であることを、今回の事案はあらためて示しています。

私たちへの影響

今回の対象は、中部電力グループの役職員・委託先社員、および関係機関・自治体・取引先の担当者の連絡先情報であり、一般家庭など電力の契約者(顧客)情報は対象に含まれていないと発表されています。そのため、中部電力管内で電気を利用している一般利用者が、今回の事案によって直接影響を受ける可能性は低いとみられます。

一方で、今回の情報流出の対象に含まれる可能性がある自治体・取引先の担当者などにとっては、氏名・メールアドレス・電話番号をもとにした、なりすましメールや不審な電話の材料として悪用されるおそれがあります。中部電力グループや関係先とやり取りのある業務関係者は、身に覚えのない連絡に注意しておくことをおすすめします。

初心者が知っておくべきこと

「資格情報(クレデンシャル)」とは、システムやサービスにログインする際に使うID・パスワードなどの情報の総称です。企業の社内システムでは、従業員一人ひとりに割り当てられた資格情報を使って、業務に必要な情報へアクセスできるようになっています。この資格情報が第三者に渡ってしまうと、正規の利用者になりすまして、システム内の情報を自由に閲覧されてしまう危険があります。

「不正アクセス」とは、本来アクセスする権限を持たない第三者が、盗まれたID・パスワードなどを使ってシステムに侵入する行為を指します。今回のように、社内の一部システムに不正アクセスされても、電力供給のような重要な設備を直接制御するシステムとは別に管理されていれば、供給そのものへの影響を防げる場合があります。

IT Postの見方

IT Postでは、電力供給という最も守られるべき機能への影響がなかった点は評価しつつも、重要インフラを担う企業であっても、社内システムの資格情報管理という基本的な対策に穴があった事実は軽視すべきではないと考えます。取引先や自治体を巻き込む規模の連絡先情報が、社内システムの資格情報ひとつで外部に渡りかねない構造は、電力会社に限らず、多くの企業に共通するリスクです。重要インフラ企業ほど、供給設備と社内の情報システムの双方に、同じ水準の警戒が求められるとIT Postは考えます。

今後どうなりそうか

中部電力は今後、対象者への通知や再発防止策の検討を進めるとみられます。IT Postでは、対象者への具体的な通知状況や、原因となった資格情報の管理体制についての続報があれば、あらためて取り上げます。