30秒で分かる結論

生成せいせいAIは「もっともらしい文章を作る」道具であり、「正しい答えを保証する」道具ではありません。

下書き・要約・言い換えには非常に有効です。一方で、事実確認・計算・最新情報については、必ず元の資料にあたって確認する必要があります。

まず初めに

結論から言う。生成AIは物知りな部下ではない。口だけは達者な新人アルバイトだ。指示したことは驚くほど手早くこなすが、聞いてもいないのに知ったかぶりで嘘を混ぜてくる。頼れるのは「作業の速さ」であって、「言っていることの正しさ」ではない。この線引きを間違えると、痛い目を見るのは使った側だ。※個人の感想です

何が起きているのか

ChatGPTやClaudeなどの生成AIが、業務のなかで日常的に使われるようになりました。

同時に、AIが作った文章に事実と異なる内容が含まれていたことによる混乱も報告されています。これは、AIの使い方というより、AIが何をしている道具なのかの理解に関わる問題です。

便利すぎる新人ほど、任せきりにした時のトラブルも大きい。

なぜ重要なのか

生成AIは、大量の文章から「ある言葉の次に来やすい言葉」を学習しています。

つまり、AIが行っているのは自然な文章を組み立てることであって、内容の真偽を判定することではありません。文章が整っているほど正しく見えるため、間違いに気づきにくいという性質があります。

事実と異なる内容を自信のある口調で答えてしまう現象は、ハルシネーションと呼ばれます。声のトーンや文章の流暢さと、内容の正しさは、まったく別の軸にあります。堂々と話す人の言うことが必ずしも正しいとは限らないのと、根は同じ話です。

得意なこと

  • 文章の下書きを作る
  • 長い文章を要約する
  • 硬い文章をやわらかく言い換える
  • 箇条書きを文章にする、その逆をする
  • 自分が書いた文章の誤字や不明瞭な箇所を指摘してもらう

共通するのは、正しさの判断を人間が持ったまま、作業量だけを減らしている点です。人間が「これは正しい」と判断できる材料を、AIが整形して差し出してくる、という関係性を保てている間は、生成AIは非常に頼れる道具になります。

苦手なこと

  • 最新の出来事を答える(学習時点以降の情報を持たないことがある)
  • 正確な数値や統計を答える
  • 出典やURLを示す(存在しないものを作ることがある)
  • 厳密な計算をする
  • 法律・医療・投資などの専門的な判断をする

出典が欲しいと言われて、存在しないURLを堂々と作ってしまうのは、生成AIのわりと有名な悪癖だ。

バランスの取れた天秤に乗った吹き出しアイコンと虫眼鏡

私たちへの影響

生成AIを業務で使う場合、次の線引きが実用的です。

  • 自分が正しさを判断できる領域 — 積極的に使ってよい
  • 自分では正しさを判断できない領域 — 下書きとしてのみ使い、必ず一次情報で確認する

たとえば、自分の専門分野のメール文面を整えるのは前者です。知らない分野の統計を尋ねるのは後者にあたります。この線引きの基準は「AIがどれだけ賢いか」ではなく「自分がその出力の間違いに気づけるか」にあります。自分の専門外の話ほど、AIの間違いに気づきにくいという、皮肉な構造があることも覚えておいてください。一番信じ込みやすいのは、実は一番確認すべき領域だということです。

なぜハルシネーションはなくならないのか

生成AIは、質問に対して「答えがない」と正直に言うより、それらしい答えを作り出すほうを選びやすい性質を持っています。学習の過程で「もっともらしい文章を作る」ことを訓練されているため、分からないことについても、分かっているかのような文章を組み立ててしまいます。これは特定のサービスに限った不具合ではなく、現在の生成AIという技術そのものに内在する性質であるため、使う側が前提として理解しておく必要があります。

「賢そうに見える」ことに引っ張られない

生成AIの回答は、専門用語や数字を交えて自信満々に書かれるため、実際の正確さ以上に説得力があるように感じられがちです。人間の会話でも、堂々と話す人の意見をつい信じてしまう場面がありますが、生成AIに対しても同じことが起きます。回答の口調や自信の強さと、内容の正しさは別の指標である、と意識して距離を置くだけで、無防備に信じ込むリスクをかなり減らせます。特に、普段の自分なら疑うはずの情報でも、AIが整った文章で提示すると素通りしてしまう、という落とし穴には注意が必要です。

職場での使い方の線引き

チームで生成AIを使う場合、個人の判断だけに任せず、どこまでAIの出力を使ってよいかをあらかじめ共有しておくと、トラブルを減らせます。社外に出す文書や顧客対応の文面は、必ず人が事実確認をしてから送る、といった基本的なルールを決めておくだけでも効果があります。ルールがないまま各自の判断に任せると、正しさへの意識には個人差が出やすく、気づかないうちに誤った情報が外部に出てしまう可能性があります。

初心者が知っておくべきこと

入力した内容が学習に使われるかどうかは、サービスや契約プランによって異なります。

業務上の機密情報や個人情報を入力する前に、利用しているサービスの設定と規約を確認してください。多くのサービスでは、学習利用をオフにする設定が用意されています。「便利だから」で確認を飛ばすと、後から取り消せない形で情報が渡ってしまう可能性があります。

ノートパソコンの画面に表示された設定のチェックボックスと鍵アイコン

IT Postの見方

IT Postでは、生成AIを「賢い相談相手」ではなく「速い下書き作成係」として捉えるのが、現時点では最も実態に近いと考えます。この捉え方であれば、出力をそのまま信じるという使い方には自然になりません。優秀な部下だと思って全幅の信頼を置いた瞬間に、足元をすくわれる道具です。

なお、IT Post自身も記事作成の一部に生成AIを使っていますが、公開前に必ず編集部が内容と情報源を確認しています。AIが出した内容をそのまま公開することはありません。※個人の感想です

今後どうなりそうか

検索と連携して出典を示すAIサービスが増えています。これによりハルシネーションは減る方向にありますが、ゼロにはなっていません。

出典が示されている場合でも、その出典が実際にその内容を述べているかまでは保証されない点は、当面変わらないと考えられます。便利になるほど確認を省略したくなりますが、その誘惑に負けないことが、この道具と長く付き合うコツです。