AI・生成AI東京発のSakana AI、複数のAIを束ねる「Fugu」はGPT-6やClaudeに勝てるのか。仕組みと結果を確かめる
東京のAIスタートアップSakana AIが「Fugu Max」「Fugu Ultra v2」を発表。単一の巨大モデルではなく複数モデルを組み合わせる仕組みで、一部ベンチマークは大手モデルを上回った。仕組みと価格を整理した
まず初めに
*1つの超巨大AIをドーンと作る力比べに疲れたのか、東京発のSakana AIは「複数の中堅AIをチームにして送り込めばいいのでは」という、まるで合体技のような発想で殴り込みをかけてきた。*しかも一部のベンチマークでは、GPT-6やClaudeという主役級を上回るスコアまで叩き出しているというのだから、油断も隙もない。※個人の感想です
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
何が起きているのか
東京を拠点とするAIスタートアップ、Sakana AIは2026年9月11日、新しいAIシステム「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を発表しました。両モデルは、同社が「Sakana Fugu」と呼ぶシステムの最新版にあたります。
Fugu MaxとFugu Ultra v2に共通する特徴は、単一の巨大なモデルを一から開発するのではなく、それぞれ得意分野の異なる複数のAIモデルを動的に組み合わせて処理を行う「マルチエージェント」型の仕組みを採用している点です。Fugu Maxは、NVIDIAのNemotronファミリーをはじめとする、すでに公開されている複数のオープンウェイトモデルを組み合わせることで、少ないトークン消費量で高い性能を目指したコスト重視のモデルです。一方のFugu Ultra v2は、性能そのものを最大化することを重視したモデルに位置づけられています。
報道によると、Fugu Ultra v2は、実務的なソフトウェア修正能力を測定するベンチマーク「DeepSWE」において74.3のスコアを記録し、OpenAIの「GPT-6 Astra」の74.1、Anthropicの「Claude Fable 5.1」の67.4を、いずれもわずかながら上回りました。視覚情報や複合的なデータの解釈力を測る「Chartography」ベンチマークでも48.3を記録したと報じられています。Fugu Maxについても、「Terminal Bench 2.1」や「GPQA-D」など複数のベンチマークで高いスコアを記録したとされています。
価格面では、Fugu Maxが100万トークンあたり入力2ドル・キャッシュ入力0.25ドル・出力6ドル、Fugu Ultra v2が入力5ドル・キャッシュ入力0.5ドル・出力30ドルに設定されています。報道では、Fugu Maxの出力価格は、Claude Sonnet 5やOpenAIの「GPT-5.6 Terra」など主要モデルと比べて4〜6割ほど低い水準だとされています。
なぜ重要なのか
今回の発表が注目されるのは、AI業界で続いてきた「とにかく巨大なモデルを1つ作る」という開発競争に対し、既存のモデルを組み合わせるという別の解き方を示した点です。巨大モデルの開発には膨大な計算資源と資金が必要になりますが、マルチエージェント方式であれば、既存のオープンウェイトモデルを賢く組み合わせることで、開発コストを抑えながら特定の作業で高い性能を引き出せる可能性があります。
*GPT-6を作らなくてもGPT-6に勝てる場面があるという証明は、資金力で見劣りしがちな日本のAI企業にとって心強い材料だろう。*米国・中国のAI大手が巨額の投資でモデルを競わせる中、東京発のスタートアップが一部のベンチマークで先行できたという事実は、開発体力で劣る国・企業にとっての選択肢を示した点で意味があります。
私たちへの影響
Fugu Max・Fugu Ultra v2は、主にAPI経由で企業や開発者が利用するモデルです。一般利用者が直接触れる機会は少ないものの、価格が既存の主要モデルより低く抑えられていることから、これらのモデルを裏側で採用するアプリやサービスが増える可能性があります。
AIを組み込んだサービスを選ぶ際には、どの企業のどのモデルが使われているかを意識する習慣が、性能・価格の両面で選択肢を見極めるうえで引き続き役立ちます。
初心者が知っておくべきこと
「マルチエージェントAI」とは、1つのAIモデルがすべてを担うのではなく、複数のAIモデルやプログラムが役割分担しながら連携して1つの目的を達成する仕組みのことです。今回のFuguシリーズのように、それぞれ得意分野の異なるモデルを組み合わせることで、単体の巨大モデルを開発するよりも効率よく高い性能を引き出せる場合があるとされています。
「オープンウェイトモデル」とは、AIモデルの中身である学習済みパラメータ(重み)が公開されており、誰でもダウンロードして自分の環境で動かせるモデルのことです。Fugu Maxは、こうした公開済みのモデルを複数組み合わせることで性能を引き出す設計になっています。
IT Postの見方――巨大化競争に一石を投じた「合体技」という選択肢
IT Postでは、Sakana AIが示した「巨大な単一モデルを一から作らなくても、既存のモデルを賢く組み合わせれば戦える」というアプローチが、資金力で先行する米国・中国の大手に対する現実的な対抗策として注目に値すると考えます。
*何兆円もかけて1つの化け物モデルを鍛え上げる開発競争に真正面から挑まず、既存のパーツを組み合わせて近道を見つけてくる発想は、油断ならない知恵の絞り方だ。*一方で、複数のモデルを組み合わせる方式は、それぞれのモデルの弱点や偏りをそのまま引き継ぐリスクや、システム全体としての一貫性の担保が難しくなる可能性も指摘されています。IT Postでは、ベンチマークの数字だけでなく、実際の利用者やAI開発者が業務でどこまで安心して使えるかという実用面の評価が、今後この方式の真価を判断する材料になるべきだと考えます。※個人の感想です
今後どうなりそうか
Sakana AIは、Fugu Max・Fugu Ultra v2の提供範囲や対応言語を今後どのように拡大していくかについて、今回参照した情報源の中では詳細を明らかにしていません。IT Postでは、日本国内での採用事例や、他社モデルとの比較検証が進み次第、あらためて取り上げます。