Anthropicは2026年8月20日、自社のAI研究成果として、AIモデル「Claude」を使った自律的なタンパク質設計の実験結果を公表しました。実験では、Claudeの複数のモデル(非公開の研究用モデルとされる「Mythos Preview」と、既存の上位モデル「Claude Opus 4.8」)が、一般に公開されているタンパク質設計モデルや構造予測モデルを、自らの判断で組み合わせて使用し、15個の標的タンパク質に対して結合するタンパク質の設計を試みました。人間の専門家が事前に用意したのは、約3万トークン分の初期指示のみで、実際の設計作業の実行中は人間による逐次的な介入を受けていないとしています。
生成AIによるイメージ。実物や実際の画面ではありません。
設計されたタンパク質は、Anthropic自身ではなく、外部の専門機関であるAdaptyv Bio社とTwist Bioscience社が独立して実際に製造し、実験室で標的への結合を確認するテストを行いました。全15標的を同時に扱う48時間の設計セッションでは、Claude Opus 4.8が22.6%、Mythos Previewが26.7%の的中率を記録しました。一方、Mythos Previewが1つの標的に絞って24時間かけて設計に取り組んだ場合には、的中率が35.1%まで上昇しています。全体では、1320個の設計のうち354個が実際に標的への結合を確認され、15個の標的のうち14個で少なくとも1つの結合タンパク質を設計できたとしています。特に「RBX1」という標的に対しては、Mythos Previewが40%の的中率を記録しており、これは同じ標的を対象にした外部の設計コンペティションの参加者平均(3.7%)を大きく上回る数字だとしています。
今回の発表にはもう一つの実験も含まれています。すでに一般提供されている「Claude Opus 5」に、実験室でよく使われる2種類の分析装置(核磁気共鳴(NMR)装置と液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)装置)から得られた生データを渡して解析させたところ、それぞれ23分・19分でAnthropicの分析結果を返し、その純度の算出結果は研究室が独自に算出した数値との差が0.1%以内に収まったとしています。
IT Postでは、AI企業の自己評価にとどまらず、外部の専門機関が実験室で検証したという点で、今回の結果は一定の信頼性があると考えます。一方で、「タンパク質結合剤は薬ではない」というAnthropic自身の注記が示すとおり、今回の成果が実際の新薬として利用者の手元に届くまでには、安全性試験や臨床試験といった長い工程が残っています。AI企業の研究発表は、華々しい数字だけが独り歩きして「AIが薬を作った」という誤解を招きやすい分野でもあるため、報道に接する際は、どの段階の成果なのかを見極める視点を持っておくことをおすすめします。